発達障害について

常同行動とマイルールが、生存戦略である件について。

自閉症の現象学 第8章です。ラストまできました。自閉症児/自閉症者の弱点と、それをカバーするためにとられている手段について、です。自閉症児については情動行動、自閉症者についてはルールとマイルールの扱いについて、ということになっています。 ◆ ま…

共有してしまう感情、永遠にわからない他人。

自閉症の現象学 第7章です。 他人の視点からものをみることができるか、というのが、自閉症のこどもではよく問題になります。他人の視点からものを見るには、他人の視点に移動する以前に、自分の視点とは異なる他人の視点が存在する、という認識が必要です…

感情が含まれない声、すなわち棒読みについて。

自閉症の現象学 第6章です。ことばについて、発音が、意味とか感情とかと不可分な定型発達と、分離独立しているASD、みたいな話です。 ◆ 間身体性ってありましたよね。自分と相手の「あいだ」あるいは境目。自分と相手の境目で、自分の運動と相手の運動、自…

ASDの子どもが、ままごととかごっこ遊びとかを苦手とする件について。

自閉症の現象学 第5章です。第5章は、視線触発がないところでの自閉症児の発達と、どうやったって知覚とか空想とかできない「現実」についてです。現実は、第4章でもキーワードになっていました。 ◆ まず、第4章の続きから(第4章と第5章にまたがって…

みえないものがいっぱいみえている空間について。

自閉症の現象学 第4章です。第3章が時間でした。第4章は空間の話です。 ◆ わたしも含め、正確な写生や模写ができる自閉症の人は多いようです。 なぜ正確なのか。知覚(この場合は視覚)そのままだからです。じゃあ定型発達の人は? 何かしらのノイズが入って…

予定変更が苦手な件とフラッシュバックについて。

自閉症の現象学 第3章です。過去と未来と、現在の話。難しい言葉は多少? 翻訳して書きますので、完全に正確かといわれるとそうでもないかもしれません。ご了承ください。今回は時間についです。 ◆ 常同行動(まったく同じ動作の繰り返し)をしているこども…

自分と相手の境界。

自閉症の現象学 第2章です。 他人が自分を見ているというベクトル(方向性、矢印)に気づくのが視線触発でした。 さて、見られた自分の側には、緊張や安心感、身体の動きが発生します。(見られているだけでは身体の動きはなかなか発生しません。しかし、た…

視線に気づくということ。

「自閉症の現象学」という本を読んでいます。「自閉症スペクトラムの精神病理」も面白くはあるのですけれど、理論編としてはこっちのほうが読んでてわかりやすいようにも思います。珍しくノート取りながら読んでます。半分哲学書(現象学)なのでさすがに用…

他人のいない世界の変貌について。

(厳密な意味での)他人のいない世界、他人がすべてNPCであり、自分がなにかしないかぎり自分と関係ない世界で自分と関係ない生活を営んでいるはずの世界に住んでいたという話をしました。その世界が多少なりとも変貌をとげたのが、10歳ごろであるとも。 …

他人のいない世界のこと。

10歳ごろまでのわたしの世界には、他人がいませんでした。 ネグレクトとかではないですよ。人間はいましたし、大事にされていたと思います。厳密な意味での他人=自分と同格のひとたち、です。親族を含めて。 ◆ 自分と同格でないというならなんだったのか。…

自分の知らない絶対的なルールがあるという無力感について。

先生が多数派で、生徒がASDの場合、そのASDの生徒はしんどい目にあいそうです。論理が苦手で、感情豊かな先生であればなおのことでしょう。以下、わたしの過去からの分析です。 ◆ 多数派の先生としては、立場が上である先生が喜ぶから、あるいは、先生が怒っ…

悪意とかいじわるとかとASDについて。

ASDの人には、悪意とかいじわるとかの意図が持てない人がいる と書いて、ものすごく怒られたことがあるんです。ツイッターをやめた理由のひとつはこれでした。なので少し怖いのですけれど、考えが進んだので書いてみます。 ◆ 相手がわるい目にあうことについ…

ASD的共感スタイルのこと。

共感にはいろいろあります。想像力とも、かぶるところがありますね。 ASDの人についても、「共感が苦手」とざっくりまとめられることがあります。しかし、ASDの人の中には、文学やアニメで想像力を鍛えた結果なのか、他人の抱える事情からその他人の感情を正…

支援する側の事情を想像する。

理由と根拠を明確に、手順を具体的に教えてもらえば「できる」ことが増えるASDの人は、わたしを含めてそれなりの数いると思います。 サンドイッチ作っといて では混乱するとしても、 たまごサンドを2個作っといて、レシピはここにあるよ であれば、上手にで…

発達障害と障害年金。

発達障害は生まれつきの障害ですし、病気や障害のために働けなかったり生活に支障が出ていたりする人がもらうのが年金である、という定義からすると、障害年金の対象ではあります。しかしこれ、正直言って「通りづらい」です。通りづらいというのは、たとえ…

「なんで怒られたかわかる?」といわれましても。

「なんで怒られたかわかる?」 「わかりません」 …… いまなら、この問答はやばい、と気づくことができます。わたしも成長したものです。こどものころは、わかるかどうか聞かれてわからないと答えただけなのに怒られるのが非常に理不尽である、と感じていまし…

感覚過敏/聴覚過敏のこと −ASDって治るんですか(6)

たとえば聴覚過敏。困っている人は多いです。まず、わがままだと思われる。わがままだと、本人が思っているケースも多いです。 わがままとの見分け方。 HPが減るかどうか、です。 聴覚過敏の問題ではなく単に不愉快、という場合は、HPは減りません。 聴覚過…

自分の中の他人の目について。

「離見の見」という言葉があります。演劇などで、観客の目で自分を見ましょう、という意味です。自分が観客であったら、いま舞台にいる自分はどう見えるか。それを意識しながら演じましょう、ということですね。 これね。定型の人であれば、普段からある程度…

ASDって治るんですか(5)「仕事ならできる」はなぜなのか

ASDの人の中には、人相手の仕事(例:精神科医)であれば、仕事において、プライベートよりずっとうまくやれる、という人達がいるように思います。わたしとか。そして、「人間関係は苦手と言いながら、人相手の仕事はなんとかやれている、ということは本当は…

問題を分解してフローチャート化する ーASDって治るんですか(4)

A「自分は有名になる、有名になってこそ名が残り人生に意味がある」 B(反対の意を遠回しに伝えるも伝わらず) A「自分の父親は凡人で、有名にもならず名も残していない。彼の人生には意味がない」 B「有名にならない人にも有意義な人生を送った人はいるんじ…

できないものはできないとあきらめる ーASDって治るんですか(3)

サリーアンの課題というテスト? があります。人の気持ちがわかるかどうか、相手の視点に立てるかどうか、のテストとされています。 ① サリーとアンの二人が部屋の中で遊んでいます。② サリーは自分の人形をカゴの中に入れて部屋を出ます。③ サリーが出てい…

よのなかのなりたち ーASDって治るんですか(2)

ASDを根本的に治す(消す)ことは、いまのわたしには不可能です。とはいえ、今後可能になるかもしれませんし、わたし以外の人がやっていることかもしれません。そうはいっても、いまの時点でできることもあるわけです。 ◆ 世の中に起きている(ASDの人にとっ…

ASDを治したいんですけど、というリクエスト ーASDって治るんですか(1)

わたしの勤める病院も、最近は、初めて受診する人には予約が必要になりました。たいていは看護師かソーシャルワーカーが電話を取ります。だいたいの受診理由をたずねてから、受診の日時と(必要な場合は)担当医師を決めます。 先日、外来の看護師さんがつぶ…

感情労働が感情労働でありえるかどうか。

感情労働、ということばがあります。Wikiによれば、「感情が労働内容の不可欠な要素であり、かつ適切・不適切な感情がルール化されている労働のこと」とのことです。 たとえば、相手が、たんに機嫌が悪くて怒っていて、やつあたりをしてきたとしても、礼儀正…

得意なことに取り組んでほしいなとか。

外来で、ASDの人を診る機会があります。最近多いです。ASDかもしれないから診断してほしい、という場合と、うつとかで困っている人が実はASDの場合と、両方あります。 ◆ 気分の落ち込み・不安・不眠などのことを、「抑うつ状態」ということがあります。「う…

わたしは正しい、正確だ、の問題点について。

ASDの人は無礼だとかなんとか言われることがあります。わたし、ASDですとカミングアウトして、「そうかキミは失礼な言動をするやつなんだね」という反応をされたことが何度もあります。何も言ってないうちに、です。 偏見だ! というのはそうなんですけど。…

コミュニケーションの作法2。上の句と下の句の組み合わせ。

前回に引き続き、ソーシャル・マジョリティ研究の復習・メモです。詳しくは本を読んでいただきたいんですけど、正直少々難しいと思いますので、だいたいのところを理解してから読むのもいいかなとか。(難しいと感じるのはわたしだけでしょうか) ソーシャル…

コミュニケーションの作法。会話の順番。

ソーシャル・マジョリティ研究という本を読んでいました。ASDなど少数派からみた多数はコミュニケーションの特徴、みたいな本です。 それにそって、復習がてらコミュニケーション論みたいなものを書いていこうと思います。 ソーシャル・マジョリティ研究: コ…

やればできる、といいな、とか。

やればできる、というのは、わたしにとっては残酷なことばです。やってもできないことが、とても多いのです。しかも、「まさか」と言われるようなことが、いくらやってもできない。できない、と信じてもらえないものだから、明るく励まされたり努力をうなが…

バレンタインデーのチョコレートの扱いとASDと定型のおはなし。

もうすぐバレンタインデーですね。 さて。(日本の)バレンタインデーといえばチョコレート。お菓子の会社の陰謀だという話もありますけれども、それにとどまらないいろいろがありうる行事ではあります。 ◆ これね。2種類ありますよね。多少古いかもしれま…