精神療法とは

双極性障害について、知っておいてほしいことなど。

双極性障害について知っておいてほしいことなど。とくに2型。そうとうつ、というよりは、うつを繰り返す病気です。 まず、身体の病気だと考えたほうがいいと思います。いろいろ事情があって落ち込んでいるのとは明らかに違います。身体が重すぎて動かない、…

超健康幻想について。

超健康幻想ということばがあります。「この病気や障害さえなければ、完璧にしあわせで順調な生活が送れるはず!」「この病気や障害がない人は、完璧にしあわせで順調な生活を送っているはず!」という幻想のことです。こうやって書くといかにも幻想ですね。…

「ASDは治る」というフレーズ。

ASDが治る治らないの議論になることがときどきあるように思います。治るというのが、ASDの特性が消滅するという意味なのか、ASD由来の問題が解決するという意味なのか、いまひとつ不明なことも多いです。「治るって何」とか考えてしまったりします。 ◆ 「ASD…

できないものはできないとあきらめる ーASDって治るんですか(3)

サリーアンの課題というテスト? があります。人の気持ちがわかるかどうか、相手の視点に立てるかどうか、のテストとされています。 ① サリーとアンの二人が部屋の中で遊んでいます。② サリーは自分の人形をカゴの中に入れて部屋を出ます。③ サリーが出てい…

よのなかのなりたち ーASDって治るんですか(2)

ASDを根本的に治す(消す)ことは、いまのわたしには不可能です。とはいえ、今後可能になるかもしれませんし、わたし以外の人がやっていることかもしれません。そうはいっても、いまの時点でできることもあるわけです。 ◆ 世の中に起きている(ASDの人にとっ…

ASDを治したいんですけど、というリクエスト ーASDって治るんですか(1)

わたしの勤める病院も、最近は、初めて受診する人には予約が必要になりました。たいていは看護師かソーシャルワーカーが電話を取ります。だいたいの受診理由をたずねてから、受診の日時と(必要な場合は)担当医師を決めます。 先日、外来の看護師さんがつぶ…

感情労働が感情労働でありえるかどうか。

感情労働、ということばがあります。Wikiによれば、「感情が労働内容の不可欠な要素であり、かつ適切・不適切な感情がルール化されている労働のこと」とのことです。 たとえば、相手が、たんに機嫌が悪くて怒っていて、やつあたりをしてきたとしても、礼儀正…

精神療法とは何かみたいなこと13。その希望にはそいかねます。

たとえば躁状態の人が外来に来たとしましょう。 「たいへん気分がよいです。この躁状態を続ける薬をください」 たとえば摂食障害でやせすぎている人が外来に来たとしましょう。 「さらにやせる、食欲の減る薬はないですか」 …… 病院に来た目的を、主訴と呼び…

精神療法とは何かみたいなこと12。そのリスクはつねにある。

医者患者関係は本質的に不平等だという考え方があります。考え方というより事実のようにも思います。 わたし自身についていえば、患者さんには怒られるし注意されるし「くすりのんでません」とかあっけらかんと報告されるし、距離がおかしいという指摘もあり…

精神療法とは何かみたいなこと11。分業の是非。

ここまで、精神科医と心理士、という比較をしてきました。 最大の違いは時間かもしれません。とくに病院勤務の場合、精神科医は「患者さんを診てカルテを書く」だけが仕事ではありません。そもそも、外来患者さんに加えて入院患者さんを受け持ってますし、と…

精神療法とは何かみたいなこと10。誰にとってのプラセボ?

プラセボ効果というものがあります。効くと思ったら効く、というあれです。鰯の頭も信心から。これと信じて、水を飲め。ご想像のとおり、精神科ではかなり有効です。よく効く薬が少ないという事実も、残念ながらあります。治験(新しい薬がほんとうに効くか…

精神療法とは何かみたいなこと9。病名というカード。

「これまでと現在、そして未来の展望がちゃんと伝わっていれば、病名は聞かれない。病名をたずねられるのは、こっちの負けなんだわ」 …と、習いました。一年目の頃です。 勝ったり負けたりしています。一年目に教えてもらっておいてよかったことのひとつです…

精神療法とは何かみたいなこと8。聴くだけならば安全?

さて、前の記事で、「ひとこと言う」ということをとりあげました。 全部聴いた上で、「過労です。すでにトリプルワークではないですか」とコメントしたとしましょう。比較的無害な例をあげたつもりです。しかし、「とにかく聴く派」の人たちからは以下のよう…

精神療法とは何かみたいなこと7。一言多い、一言少ない。

さて、話を聴くことそのものが精神療法で「ありうる」として、それだけなのか、という問題です。聴けばいいのか。聴きさえすれば患者さんは自分で答えを見つけ解決していくのか。 「そのとおり」と言いたい気持ちはあります。実際そのとおり、という人は一定…

精神療法とは何かみたいなこと6。話を聴いてください!

「話を聴いてほしい」というリクエストはよくあります。 「話を聴いてほしいとのことです」と、看護師さんに言われることもあります。 「話を聴いてくれなかった!」との不満もしばしば耳にします。 ◆ 話を聴くというのは技術だと思います。「相手がしゃべっ…

精神療法とは何かみたいなこと5。伝統的?診断のこと。

たとえば、30代女性の患者さんが「最近あまりに落ち込みがひどいので来ました」と外来に来たとしましょう。 ・生理前!(月経前症候群、PMS)、甲状腺 ← ホルモン ・まさにうつ病/躁うつ病 ・パワハラとか介護がとか、いろいろな「事情」 ← 適応障害 ・そも…

精神療法とは何かみたいなこと4。医師免許のつかいみち。

精神科医と心理士を比べたとき、大きな違いは 精神科医には医師免許がある だと思います。 ◆ 医師免許でできることはいろいろあります。 そのなかでもインパクトが大きいものに、 薬が処方できる (処方権) というものがあります。 いや、薬を処方するとい…

精神療法とは何かみたいなこと3。ふつうのことば?

「患者さんの症状について、 彼/彼女に対して失礼にならない、ふつうのことばで症状を説明し おたがい納得できたならば、 その説明そのものが治療的である」 という意味の文章を読んだことがあります。 (ちょっと翻訳しました) ◆ ちょっと解説。 これ、主…

精神療法とは何かみたいなこと2。ストレートにたずねられてしまった件。

前回にひきつづき。 精神科医が行う診察を「精神療法」と呼びます。 なんなんだ、と思いますよね。 わたしは思います。 ◆ 「本で、この病気の治療は薬と精神療法であると読みました。 薬が効いたのはわかります。ところで、精神療法ってなんですか」 ストレ…

精神療法とは何かみたいなこと。

心理士の友人に、 「医者って、薬を処方できるぶんほんと楽だよね」 と言われたことがある。 まったくそのとおりだと思った。 ◆ 薬を処方することには、少なくとも、 ・患者さんが、なにかしてもらった気になる ・医者が、なにかよいことをした気になる とい…