アスペについての精神病理

よのなかのなりたち ーASDって治るんですか(2)

ASDを根本的に治す(消す)ことは、いまのわたしには不可能です。とはいえ、今後可能になるかもしれませんし、わたし以外の人がやっていることかもしれません。そうはいっても、いまの時点でできることもあるわけです。 ◆ 世の中に起きている(ASDの人にとっ…

指示はことばで、というと漠然とした反発を受ける件について。

忖度とか怖いし、とか、指示はことばでお願いします、とかいうと、多数派の人たちから漠然とした反発を感じることがあります。この、「漠然とした」には、わりと重要なポイントが隠されているのではないかとふと思いました。 ASD、なかでも、言語能力高め…

責任を引き受けるのは当然という美意識のこと。

わたし、忖度ということばを目にするたびにイライラします。 これ、ふと思ったんですけど、ASDの(全員じゃないだろうけど)患者さんたちが病棟のルールに納得できないとき、たとえば「それはわたしが決めることで、わたしはそれを許可しない。だからダメ…

茶碗がたまってきたね、だから何?

「茶碗がたまってきたね」に対し、「そうですね」と答えていたらネガティブな評価を受けた旨のツイートが流れてきました。正解は? 「洗っておきますね」のようですね。じゃあ、茶碗を洗えと言え、とかつい思うんですけれど、ASD的反論はさておきましょう…

それは失礼だ! についての考察。

「目上に失礼」って怒られることはよくあるんです。そのいっぽうで、「目下に平等」と言われることもあります。どっちも、コメントに値する、つまり、ふつうではない、ってことですよね。100%ふつうであれば、コメントはしないわけですから。 ここでちょ…

アスペには、他人の気持ちはわかるのか。

「アスペには、他人の気持ちはわからない」 とかいう失礼なフレーズがありますよね。それを本人の前で言い放つほうが「他人の気持ちがわからない」だろう、と思ったりもします。たしかに、何かしら間違えることは多い。社会性とか社会的コミュニケーションと…

アスペについての精神病理12。まずは多数派について。

前回、「まとめの図」を載せました。 多数派まとめ 多数派から話を始めたほうがわかりやすそうなのでこっちから話を進めます。 そもそも、赤ちゃんの段階で、「他人の視線を感じる」ことができるようなのです。たとえば目を合わせることができるとか、ほかの…

アスペについての精神病理11。ここまでの、暫定的なまとめ。ひとまず図。

アスペについての精神病理シリーズも10回を迎えたので、わたしの仮説をちょっとまとめてみます。といっても、けっこうな分量がありますので、ひとまず図だけ… 多数派を分析したほうがわかりやすそうなので、まずは多数派の図だけあげておきますね。前回述べ…

アスペについての精神病理10。アスペの原因探求と、精神医学の基礎の基礎。

これまでの「アスペについての精神病理」シリーズでこころがけた?ことは、「なるべく一つの原因でいろいろな特徴を説明する」だったのです。これには、精神医学(および医学一般)の考え方がかなり関わっています。 疾患単位、という考えかたがあります。た…

アスペについての精神病理9。自分はどこにいるのか、わかってる?

以前、わたしには「他人の視線を感知する能力」が低く、その結果、他人の視線の集大成である「自分自身を観察する自分」がいない、というお話をしました。その結果、空気が読めないというストーリーでした。 アスペについての精神病理2。空気が読めないこと…

アスペについての精神病理8。納得できる・納得したい。

アスペについての精神病理7。他人のいない世界というのはどういうこと? - 精神科医的ひとりごと(仮) のつづきです。納得へのこだわり、ですね。自分で考えて納得してはじめて行動できる、自分の言葉で納得できるまで考え続ける、みたいなことの根底にあ…

アスペについての精神病理7。他人のいない世界というのはどういうこと?

アスペはものと人との区別がついていないとか、他人を他人と思っていない(傍若無人ってことですね)とか、いろいろさんざんな言われ方をすることがあります。たしかにわたしはドアにぶつかったらドアに謝ったりしますけれども、そこまで言われる筋合いはな…

アスペについての精神病理6。不意打ちおよびそのダメージについて。

予定外にとにかく弱いんです、わたし。調子が悪くなってくると、夫と外食してその帰りにコンビニに寄ると言われただけで混乱します。郵便受けが開けられなくなります。どういう郵便物が入っているかわからないからだと思います。 これ、前回の「ボトムアップ…

アスペについての精神病理5。あずさにとっての学習とは。

人間関係から、少し離れます。学習についてです。 「アスペの学習/認知はボトムアップだ」と、いろんなところに書いてあるのです。どういうことなんだろうとずっと不思議だったんですよね。なぜ、はともかくとして、起きていることおよび多数派との違いが少…

アスペについての精神病理4。共感と論理の和は一定らしい?

共感とは、相手の気持ちを読み取ることに加えて、読み取った気持ちに自動的に反応してこちらの感情が動いてしまうことである、と先日読んだ本に書いてありました。「共感?いちおう気持ちは読み取れるというか理解はできるつもりだから、アスペのなかでも共…

アスペについての精神病理3。ありがちやりとりが苦手なことと、アスペ的誠実さについて。

あずさの対人関係を、アスペについての先人の考察を参照しつつ分析していきます。 前々回および前回の記事の結論としては、 他人の視線(他人が自分について何か思うところがある、ということ)が感じられない 自分自身を観察する自分、というものが発達しな…

アスペについての精神病理2。空気が読めないことの分析。あずさ自身を症例として。

前回の記事で、アスペの子どもにとっては「自分を見ている他人、自分をどうこうしようと思っている他人」を意識するのが難しいということをとりあげました。(全員とは限りません。あずさを例としてとりあげ、あずさがアスペの典型だという仮定に基づき「ア…

アスペについての精神病理。頭の整理をかねて。あずさ自身を症例として。

精神病理というのは、それぞれの病気の症状がどういうわけで形成されてきたのかを考える学問です。昨今、残念ながらあんまり流行りません。なにがどのようにとかどうでもいいから現在の症状を分類して治療すればいいじゃん、という「現実的」な主張と相容れ…