知能検査について

「マルチタスク」が意味するもの。

作動記憶(WM)が高いということはマルチタスクが得意なはず、マルチタスクが苦手なので作動記憶(WM)が低いんだと思います、とかいうじゃないですか。あれ、どうしてそう広まったんでしょうね。作動記憶(WM)は「頭の中の作業テーブル」であるというたと…

作動記憶(WM)と処理速度(PS)の関係について。

作動記憶(WM)と処理速度(PS)については、台所をたとえとして使うことがあります。 ・作動記憶(WM)→ コンロの数 ・処理速度(PS)→ 調理の速度 とします。 さて、料理をしましょう。味噌汁と炒めものを作るとします。 コンロが2つあれば、同時に作れば…

処理速度(PS)と作動記憶(WM)のかかわり。

処理速度(PS)について。重要な点は、これが「処理」速度=単純作業の速度に近い数値であるということです。頭の回転の速さを直接測っているわけではないんですよね。 ◆ 処理速度(PS)だけがものすごく高く、他がそうでもない場合、頭の回転が速い、という…

VC=言語理解について。

VC(言語理解)についてあらためて。WAIS-IIIです。 VC(言語理解)は、以下の3要素から成り立っています。 ・単語(単語の意味) ・類似(単語2つの共通点) ・知識(学校で習う知識とか、クイズに近い) どれも高いとかどれも低いとかがありそうな感じで…

知能検査からわかること ー苦労する組み合わせ

2021年、知能検査についての知識と経験は増えた気がします。 知能検査から、「苦労する組み合わせ」が見えることもあります。同じ「IQ100」でも、全体的に100なのと、得意不得意がはっきりしている場合とでは、後者のほうが苦労が多いという印象です。 苦労…

発達障害と障害年金。

発達障害は生まれつきの障害ですし、病気や障害のために働けなかったり生活に支障が出ていたりする人がもらうのが年金である、という定義からすると、障害年金の対象ではあります。しかしこれ、正直言って「通りづらい」です。通りづらいというのは、たとえ…

知覚統合と問題解決能力 −知能検査について

WAIS-IIIに「知覚統合」ってありますよね。WAIS-IVでは「知覚推理」というようです。「知覚推理」のほうがわかりやすいような気もするのですけれど、ここでは、WAIS-IIIの用語を採用します。この「知覚統合」についてです。 何を知覚して何を統合するのか、…

ワーキングメモリのはたらき(3)情報をまとめる

ワーキングメモリとはいっぺんに考えられる範囲である、みたいなことを書きました。なので、ワーキングメモリが高い(広い? 大きい?)と、脳の中の検索範囲が広いので、思いつく範囲も大きくなるように思います。 便利そうですよね。 で、このワーキングメ…

ワーキングメモリのはたらき(2)

以前、ワーキングメモリについて書きました。その後、主に診療において、いろいろ考えることがありました。 作動「記憶」とかいうんですけどね。「記憶」というイメージとは、少しずれるように思うんです。 ワーキングメモリがすごく低い人の場合。たとえば…

「ワーキングメモリ」の働き、について。

ワーキングメモリ、あるいは、作動能力、についてです。「頭の中の、作業を行うテーブルみたいなもんです」 いやまあそうなんですけどね。 脳が、どれだけのことを同時に行えるか、というほうが、わかりやすいように思います。マルチタスク、といったほうが…

知能検査で計れるもの5。作動記憶を補う。

作動記憶(WM、ワーキングメモリ)の検査の中に、「算数」ってあるんですよね。問題文が読み上げられるのを聞いて、暗算する。ああいうの苦手です。順唱逆唱(とくに逆唱)よりはマシだけど。さて。 作動記憶が弱い人の中には、まさに暗算で困っている人がい…

知能検査で計れるものその2。知覚統合。

WAIS-III つづき、です。今回はPO=知覚統合について。 vIQ 言語性IQ pIQ 動作性IQ fIQ 全検査IQ VC言語理解 PO知覚統合 WM作動記憶 PS処理速度 「知覚統合」が、単語としてはいちばんわかりづらいかもしれません。「視覚的情報を取り込み、各部分を相互に関…

知能検査で計れるものその1。言語理解。

ASDの診断において、補助検査といいつつしばしば行われるのが知能検査です。知能検査のうち、WAIS-IIIとよばれるものがしばしば用いられます。ASDの診断には補助的に用いるにすぎませんけれども、本人のためになる情報がいろいろ得られるので、行われる頻度…