ASDって治るんですか(5)「仕事ならできる」はなぜなのか

ASDの人の中には、人相手の仕事(例:精神科医)であれば、仕事において、プライベートよりずっとうまくやれる、という人達がいるように思います。わたしとか。そして、「人間関係は苦手と言いながら、人相手の仕事はなんとかやれている、ということは本当はもっとうまくやれるはずなのに、仕事にだけ努力してそれ以外を軽視しているからこんなことになるんだ」とか怒られたりするわけです。

わたしだけかもしれませんけれど、「仕事以外で、仕事と同じくらいのレベルの結果を出す」のは困難です。無理です。

やる気スイッチの問題もたしかにありますけれど、それだけじゃありません。

 

 

仕事ってね、プライベートに比べてずっと、単純なんです。

 

たとえば、診察室。患者さんの入ってくるドアは決まっています。ということは、患者さんを呼んだら、ドアのところに注目していればいい。もっというと、わたしが呼ぶまで、患者さんは入ってきません。いきなり声をかけられる可能性は非常に低いです。

これだけでも、ずっと楽になったりするんですよね。

プライベートでは、どの方向から、いつ、声をかけられるかわからないでしょう? 意外性が多いと、どうしていいかわからなくなる可能性が高いのです。

じつは、わたしは、緊急事態には役に立ちません。

 

 

病院だから緊急事態はあるだろう、急病とか、転倒とか。

 −− もちろんあります。きちんと対処はしています。

病院での緊急事態って、実は、種類が少ないんですよね。そして、急病とか転倒とか急患とか、種類が決まっていますから、この仕事についたときからいろいろ習ってもいますし、経験も積んでいます。それなら対処できます。

保険として、未経験の事態で自分がパニックになってどうしていいかわからなくなったとしたら次はどうするか、も、考えてあります。要は早めに助けを呼ぶ。誰に助けを求めるかの順番は決めてあります。

準備は大事です。どうしていいかわからなくなったらどうするかが決まっているとなおよいです。そして、仕事では準備がしやすいのです。

 

もちろんわたしは、救急科で働くことは無理です。

 

 

専門職が勧められるのはこのへんの事情もからんでいそうな気がします。専門職であれば、専門の仕事をして、専門の仕事の範囲内のトラブルだけに対処すればいいですものね。

専門職! として就職するのではなくとも、何か、才能が示せれば「そっち専従」としてもらえることもあるので、得意なことを活かせるところで働けるといいんだけどな、と、いつも思っています。