得意なことに取り組んでほしいなとか。

外来で、ASDの人を診る機会があります。最近多いです。ASDかもしれないから診断してほしい、という場合と、うつとかで困っている人が実はASDの場合と、両方あります。

 

 

気分の落ち込み・不安・不眠などのことを、「抑うつ状態」ということがあります。「うつ」という言葉も使います。これ、理由なく起きる場合には、身体の病気として「うつ病」といい、本人というよりは環境の問題(環境との相性の問題)のときには「適応障害」という、というのが基本です。他にもいろいろありますけれども、おおざっぱにいえばこんな感じです。

 

さて、この、ASDの人の抑うつ状態について。うつ病の人もいるとはいえ、「適応障害」といったほうがよさそうな人も多くいます。

で。仕事をしている人の場合、「得意分野じゃない仕事をしている」ことが理由のメインなことがあります。得意分野の仕事をしている間は元気だった、とおっしゃる方も多いです。そのいっぽうで、ASDがわりと重くても、得意分野の仕事をしている人は、意外と元気だったりします。周りとも(ASDのわりに)案外うまくやれている人もいます。

 

 

得意分野に取り組んでほしいな、と思います。

ASDのなかでも真面目な人は、「できないことを伸ばして普通になることこそがいいことだ」「できないことを避けて通るなんてわがままだ」と考えていることがあります。わたしはそうでした。できないことを減らしたかったんです。運動とか。そして、運動に取り組んでよかったことは、「苦手なことに取り組んでもぜんぜん伸びない」ということを痛感したことでした。ほんと伸びない。いつまでたってもできるようにならない。20代なかばで気づきました。もっと早く気づけばよかったです。

反対に、得意なことは学習も速いです。たとえばわたしの場合、文章を読むのは得意ですし、読んだ知識を整理することも、覚えておくことも、たとえば診断に役立てることも、苦にはなりませんし、効率はいいほうだと思います。

そして、苦手なことに取り組んでいる間は、自己評価は下がりゆううつになります。得意なことに取り組んでいる間は、自己評価が上がりハッピーになります。あたりまえですよね。

 

 

学生の間は仕方ないと思うんです。とくに高校生までは、必修の科目が多いです。何をどうやってでも、出席して最低限の点数はもらわないと卒業できない。

でも、社会人になってからは違います。もちろん、部署異動が頻繁な仕事とか、カバー範囲の広い仕事とか、「苦手なことを避けて通ることが不可能」な仕事も多いことは承知していますけれども、それにしたって、学生のときみたいに、「全員」体育が必修、なんてことはないと思います。

うまくいけば、たとえば、「営業は得意なので営業に集中して、書類は苦手なので得意な人に任せる」みたいなことも可能かもしれません。

 

 

なんか、苦手なことで怒られすぎて、苦手を消すことこそが正しいと思っている人、多いんですけどね。わかるんですけど、でも、世のため人のために働く(役に立つ)には、得意なことに取り組んだほうが近道だと思います。世のため人のために貢献できることはいいことだと、わたしは考えています。

…… 苦手に注目しすぎて自分の得意なことが行方不明になっている人も多い印象です。もしこころあたりのある人がいたら、得意なことについて考えていただければさいわいです。健康になるし。世のため人のために働けるし。