発達障害について

自分的常識とか自分的前提とか。

自分的常識とか自分的前提とかときどき言います。「自分的」なものであると気づいたのは数年前で、それまでは人類にとって普遍的な常識あるいは前提だと思っていました。思うどころじゃありません。そこにコップがある、足元に地面がある、というレベルの「…

本能と論理、あずさの場合。

あいさつは、あいさつという掟なんだから、ひとまず従っておきましょうよ、なんて言うと、それがあずさの道徳の欠如だとか、あずさは人間味を欠いているとか怒られたりします。人間なはずなんですけど、それはさておき。 ◆ あいさつは、共同体の掟にすぎない…

ありがとうはわかる、ごめんなさいはわからない?

自分で自分について不思議だったことがあります。「ありがとう」の意味および用法はとくに言語化の努力もせずだいたい正しくマスターしているのに対して、「ごめんなさい」は全力で言語化してやっと理解できる。 また、こういうのもあります: ケース1 Aさ…

相対評価、絶対評価。

たとえば、今回のテストで、わたしの点数が70点、Aさんの点数が70点だったとしましょう。さて、次のテスト。 ・わたしの点数が90点、Aさんの点数が70点 → 嬉しい まあ、そうですよね。これは理解していただけると思います。これはどうでしょう。 …

共感の代わりになりうるものについて。

相手の感情に反射的に応答する「共感」は、わたしには無理です。たぶん、一生無理だと思います。じゃあ、相手の感情に応答することが100%無理なのか。100%無理ってほどでもないんじゃないかなあ、というのがわたしの希望的観測です。磨ける技術を磨…

自他分離、の「他」は存在するのか。

前回の記事での、「誤解はつらい、真意は文字通りですでに示されているのだから、別に許してくれる必要はないけれど、そのまま受け取ってほしい」というのが、 ・自分の不安の解消を相手に求めている ・誤解をどうこう、のコストが違うのだから、定型が負担…

「ことばどおり」が指しているもの。

ASDの言うことは言葉通りだ、というフレーズを聞いたことがある人は多いと思います。ローコンテクスト(=前提となる事情が少ない)はずだと自分が思っているから実はハイコンテクストだったとしても察してよね、という意味ではかならずしもないんだ、これ、…

生まれつきとその後の環境とASD「らしさ」。

先日、ASDの人と会う機会がありました。患者ではない同類(ASDの人)と会うというのは、なかなかない機会ではあります。そこで思ったこと。 その人のASD関連トラブルは、わたしのそれとあまり変わらないように思えました。トラブルの種類も、頻度も。わたし…

知能検査で計れるものその3。作動記憶。

「作動記憶」、ワーキングメモリともいいます。これ、要するに「テーブル」です。テーブルとはなんぞや。これから説明します。 テーブルが広いほうが、ものはたくさん乗ります。あたりまえですね。この、「頭の中のテーブル」が、作動記憶です。 作動記憶を…

それでも何かをしてあげたい、として。

たとえば泣いているこどもがいたとして、多数派の人は、「自動的に」こころが動き、「こころから」何かをしてあげる、またその際に、最善の行動を「自動的に」選ぶことが可能なのだろうと推測しています。しかしわたしは、その「自動」が働かない。そんなプ…

言わぬが花、の正体は?

隣の家の大学生が夜中まで音楽をかけていて迷惑だな、と思っているとしましょう。「夜中は静かにしてください」と言いました。でも効果なし。さて次の日。 「うちには、小さいこどもがいるんです」 と言いに行くのが定型の人だと聞きました。 「うちには、小…

指示はことばで、というと漠然とした反発を受ける件について。

忖度とか怖いし、とか、指示はことばでお願いします、とかいうと、多数派の人たちから漠然とした反発を感じることがあります。この、「漠然とした」には、わりと重要なポイントが隠されているのではないかとふと思いました。 ASD、なかでも、言語能力高め…

責任を引き受けるのは当然という美意識のこと。

わたし、忖度ということばを目にするたびにイライラします。 これ、ふと思ったんですけど、ASDの(全員じゃないだろうけど)患者さんたちが病棟のルールに納得できないとき、たとえば「それはわたしが決めることで、わたしはそれを許可しない。だからダメ…

茶碗がたまってきたね、だから何?

「茶碗がたまってきたね」に対し、「そうですね」と答えていたらネガティブな評価を受けた旨のツイートが流れてきました。正解は? 「洗っておきますね」のようですね。じゃあ、茶碗を洗えと言え、とかつい思うんですけれど、ASD的反論はさておきましょう…

ASD傾向のある患者さんへの「あたりまえの」対応について。

入院時の外出は、わたしの勤めている病院では16時までです。16時までに、病棟に戻ってこなければなりません。 ASD傾向のある人が、これに納得できないとしましょう。ASD傾向のある人は、病棟スタッフの間で、「しつこい」「何度も窓口に来る」「しかも納得し…

キミには悪霊が憑いている?

悪意の話、もう少し続けます。これがたぶんラスト。 というのも、この、「悪意があると決めつけられる」のが、ものすごく怖くって。悪意がないから許してくれだとか許すのが当然だとか正しさを主張することを優先しているとかそういうのではぜんぜんなくって…

ASDは「悪意」を持ち得ない、として。

ASDの人の多くは、悪意なんて高級なものを持つことができない というのは、全員じゃないんですけど、できれば「原則」として広まってほしいです。 ◆ 相手を困らせ、困っている相手を見て楽しむ というのは、高度に社会的な技術だと思います。 わたしにとって…

あずさの、アスペ的ふりかえり。

わたしの歴史?みたいなものは、たぶんアスペとものすごく関連しているので、少しお話したいと思います。小学校5年生くらいまでは、アスペが強すぎてトラブルに気づけないことと、何でもかんでも全肯定する父親のおかげで、悪い思い出はほとんどありません…

アスペには、他人の気持ちはわかるのか。

「アスペには、他人の気持ちはわからない」 とかいう失礼なフレーズがありますよね。それを本人の前で言い放つほうが「他人の気持ちがわからない」だろう、と思ったりもします。たしかに、何かしら間違えることは多い。社会性とか社会的コミュニケーションと…

アスペが「治る」のかどうか、についての私論。

@aki7ito さんとのTwitter上で@aki7ito さんとのTwitter上でのやりとりをもとにしています。 アスペが(自閉症スペクトラム=ASDや他の発達障害も含めて)治ることはあるのか、という問いについて、です。いろんなひとがいろんな答えを持っていることと思い…

アスペについての精神病理11。ここまでの、暫定的なまとめ。ひとまず図。

アスペについての精神病理シリーズも10回を迎えたので、わたしの仮説をちょっとまとめてみます。といっても、けっこうな分量がありますので、ひとまず図だけ… 多数派を分析したほうがわかりやすそうなので、まずは多数派の図だけあげておきますね。前回述べ…

アスペについての精神病理10。アスペの原因探求と、精神医学の基礎の基礎。

これまでの「アスペについての精神病理」シリーズでこころがけた?ことは、「なるべく一つの原因でいろいろな特徴を説明する」だったのです。これには、精神医学(および医学一般)の考え方がかなり関わっています。 疾患単位、という考えかたがあります。た…

あずさの父親のこと。父親からみたあずさが、自分の分身であったこと。

わたしのこども時代のお話を、何度か書いてきました。そのなかに、父親がしばしば登場していることにお気づきの方も多いかと思います。父は、未診断ながらまず間違いなくアスペだろうとわたしは考えています。ほぼ全肯定で育ててくれました。中学校に上がる…

アスペについての「よくわからないフレーズ」についての、あずさの見解。

アスペについて、最近はインターネットで専門用語がかんたんに参照できることもあり、わかりづらいことばが誤解されたまま出回っているケースが多いように思います。わたし自身も誤解したりよくわからなかったりしていました。いまも、絶対に100%正しいとは…

アスペについての精神病理9。自分はどこにいるのか、わかってる?

以前、わたしには「他人の視線を感知する能力」が低く、その結果、他人の視線の集大成である「自分自身を観察する自分」がいない、というお話をしました。その結果、空気が読めないというストーリーでした。 アスペについての精神病理2。空気が読めないこと…

上下関係、命令、組織。

昔話です。 先輩「なんで俺の言うこと聞けないの」あずさ「言われた指示はすべて実行したではないですか」先輩「全部いちいち理由を聞いたでしょ」あずさ「聞きましたよ。納得してから実行したいですもの」先輩「それ、言うこと聞いてるって言わないから!」…

アスペについての精神病理8。納得できる・納得したい。

アスペについての精神病理7。他人のいない世界というのはどういうこと? - 精神科医的ひとりごと(仮) のつづきです。納得へのこだわり、ですね。自分で考えて納得してはじめて行動できる、自分の言葉で納得できるまで考え続ける、みたいなことの根底にあ…

アスペについての精神病理7。他人のいない世界というのはどういうこと?

アスペはものと人との区別がついていないとか、他人を他人と思っていない(傍若無人ってことですね)とか、いろいろさんざんな言われ方をすることがあります。たしかにわたしはドアにぶつかったらドアに謝ったりしますけれども、そこまで言われる筋合いはな…

アスペについての精神病理6。不意打ちおよびそのダメージについて。

予定外にとにかく弱いんです、わたし。調子が悪くなってくると、夫と外食してその帰りにコンビニに寄ると言われただけで混乱します。郵便受けが開けられなくなります。どういう郵便物が入っているかわからないからだと思います。 これ、前回の「ボトムアップ…

アスペについての精神病理5。あずさにとっての学習とは。

人間関係から、少し離れます。学習についてです。 「アスペの学習/認知はボトムアップだ」と、いろんなところに書いてあるのです。どういうことなんだろうとずっと不思議だったんですよね。なぜ、はともかくとして、起きていることおよび多数派との違いが少…