前回にひきつづき。
精神科医が行う診察を「精神療法」と呼びます。
なんなんだ、と思いますよね。
わたしは思います。
◆
「本で、この病気の治療は薬と精神療法であると読みました。
薬が効いたのはわかります。ところで、精神療法ってなんですか」
ストレートにたずねられたこともあります。
おおっと、ついに聞かれてしまった。焦りました。
その患者さんには薬がよく効き、症状はあきらかに改善していました。
いろいろ話もしましたし、信頼関係もできていたように思います。
それはともかく。
◆
たとえば、先日これこれの副作用が出ましたよね。
で、こういう対策をとったから、これくらいの時期に治るって言いましたよね。
実際治りましたよね。
本人とかご家族にとっては、何がなんだかわからなかったと思うのです。
これは何なのか、病気そのものなのか副作用なのか、
副作用だとわかったとして、いつどうやったら治るのか、
というかそもそも治るのか、わかんないですよね、ふつう。
わたしはそういう副作用の出た患者さんを治療したことがあるわけです。
なので、それが副作用であって、こんな対策があって、
その対策でよくなるまでにどのくらいの時間がかかるか、
個人差はあるにせよ、だいたいのところは知っています。
その知識を使って、現状・対策・今後の見通しを説明しました。
説明を聞いたら、多少は安心したでしょう?
そういう、現状(原因)や対策、今後の見通しを説明して
安心して療養できるようにするのが、精神療法だと思います。
◆
「思います」とか言ったはずです。
言い切るほどの自信がないってことです。
現状と見通しは必要です。
地図はあったほうがいい。
医者が何を考えて現在の治療を選択しているのかを知らなければ、
賛成することも反対することもできないわけだから、
患者さんには、治療の根拠について知る権利(と、たぶん義務)があるでしょう。
◆
…… これって、身体の治療でも必要とされることばかりですよね。
「精神療法」とわざわざ名乗っておきながら、身体の治療と全部共通?
ただの、インフォームド・コンセント?
まだあるはず、というか、あってほしい、と思います。
というわけでたぶん続きます。