アスペには、他人の気持ちはわかるのか。

「アスペには、他人の気持ちはわからない」

とかいう失礼なフレーズがありますよね。それを本人の前で言い放つほうが「他人の気持ちがわからない」だろう、と思ったりもします。たしかに、何かしら間違えることは多い。社会性とか社会的コミュニケーションとか社会的想像力とかに障害があると、難しい本にも書いてあります。

しかし、です。「アスペには、他人の気持ちはわからない」とか言っている定型の人たちは「他人の気持ちがわかり」、アスペはほんとうに、彼らの言う通り、「他人の気持ちはわからない」のでしょうか。

 

 

以下、基本的にはあずさ自身を参照して書きます。アスペ/ASD全体を概観するだけの知識は今のところ持ち合わせていないのです。

 

さて。問題は、「他人の気持ちがわかる」の定義にある、とわたしは考えます。「他人の気持ちがわかる」って、ふわっと言っちゃうんですけどね、あれ、何でしょう。複数の意味があって、みなさん、自分の都合のいい意味に解釈しているのではないかと疑っているのです。

 

A 他人の感情がわかる

1)他人の表情や声のトーンが読み取れる

2)他人の感情に動かされる・自動的に追体験してしまう

3)「このようなときにはこのような感情を抱くはずだ」と、経験的あるいは論理的に、感情を推論することができる

 

B 他人の思考がわかる

1)他人の思考がトレースできる(論理的に)

2)他人の思考がトレースできる(彼なら〜と考えるであろう)

3)自分だったら、と置き換えて考えることができる(想像力)

 

C 上記を総合できる

1)全部足し合わせることができる

2)矛盾を検出しその矛盾から何か結論を導くことができる

3)そのうえで、自分と相手の関係性を考慮し、適切な行動を選択する

4)A〜Cすべてを、言語を介さず、瞬時に、なんとなく実行する(精度はともかく)

 

わたしだったら…

Aについては、1)単なる読み取り は可能です(ただし、注意を向けているという前提条件がつきます)。2)追体験 は不可能です。自動的に動かされることもありません。泣き落としとか無効です。3) は可能です。

Bについて。1) 論理的トレースはむしろ得意です。 2) ただし、個別性に配慮せよと言われても困るケースが多いです。論理は全員に共通では?とつい考える。 3) 置き換えることは可能です。しかし、考え方や感じ方が少数派のため、置き換えるとかえって読み取りに失敗します。

Cについて。1)非常に困難です。 2)単なる読み取りと論理的トレースの差から何かを読み取ることは可能です。診察場面でよくあります。3)これに失敗するから問題が起きます。4)完全に不可能です。

 

 

というわけで色分け。できるものを緑、できないものを赤、微妙なものを黄色にしてみました。

 

A 他人の感情がわかる

1)他人の表情や声のトーンが読み取れる

2)他人の感情に動かされる・自動的に追体験してしまう

3)「このようなときにはこのような感情を抱くはずだ」と、経験的あるいは論理的に、感情を推論することができる

 

B 他人の思考がわかる

1)他人の思考がトレースできる(論理的に)

2)他人の思考がトレースできる(彼なら〜と考えるであろう)

3)自分だったら、と置き換えて考えることができる(想像力)

 

C 上記を総合できる

1)全部足し合わせることができる

2)矛盾を検出しその矛盾から何か結論を導くことができる

3)そのうえで、自分と相手の関係性を考慮し、適切な行動を選択する

4)A〜Cすべてを、言語を介さず、瞬時に、なんとなく実行する(精度はともかく)

 

全部「できない」と決めつけるのは、早計っぽくないですか。

 

 

それ以前に、もう一つ問題があります。

そもそも、他人の気持ちをわかろうとしているか

という問題です。

 

「アスペには他人の気持ちがわからない」とか本人の前で言っちゃうひとは、この項目がクリアできていないのではないでしょうか。これがないと、A〜Cすべてが成り立たない気がします。かろうじてA-2だけは働くかな?どうでしょう。