アスペについての精神病理10。アスペの原因探求と、精神医学の基礎の基礎。

これまでの「アスペについての精神病理」シリーズでこころがけた?ことは、「なるべく一つの原因でいろいろな特徴を説明する」だったのです。これには、精神医学(および医学一般)の考え方がかなり関わっています。

 

疾患単位、という考えかたがあります。たとえばインフルエンザ。

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かかりやすい体質はとくにないです。強いて言えば免疫が下がっているひとはかかりやすいかもしれません。原因はインフルエンザウイルスです。熱が出たり咳が出たりするけど、数日で治ります。まれに亡くなる人もいますけれども、解剖しても(少なくとも肉眼では)とくに特徴はないはずです。

 

「インフルエンザってそういう病気だよね」

はい。この、「かかりやすい体質」「原因」「症状」「経過・予後=病気が始まって、どういう症状が出て、どうやって治るか、あるいは治らないか」「解剖→多くの重い病気は解剖したら確定診断がつきます」のセットを、疾患単位といいます。

これらが全部そろってこそ、ひとつの病気が定義できた、ということじゃんね、ということになっているわけです。

 

この「疾患単位」の利点は、病気が定義できるというだけではありません。治療や予防を考える上で、非常に役に立ちます。だって、「発熱」というだけでは、解熱剤以外の治療はしづらいですよね。インフルエンザだったり結核だったりするわけです。ちゃんと分類できれば、確実な治療につながりますし、予防法の開発も可能でしょう。だれを重点的な予防の対象にするかを含めて、です。

 

というわけで、精神医学もこの「疾患単位」を目指しているわけです。

 

…しかし、この「疾患単位」、精神科でも内科でも、すべての病気について明らかになっているわけではありません。感染症では比較的明らかになっていますし、じつをいうとこの考えかたそのものが、感染症の原因がつぎつぎと明らかになっていった時代(100年前とかです)に始まったものだったりもします。

 

それでも、です。多くの精神科医が、なんとなくであってもこの「疾患単位」は意識していて、たとえばアスペについても、せめて原因を一つに絞りたいなあと考えたりしているわけです。もちろん、わたしも例外ではありません。なので、アスペは「他人の視線を察知しづらいこと」が原因(あるいは、真の原因の結果)かな、と考えたわたしは、いろいろな特徴をその視線の件で説明しようとこころみるわけです。仮説にすぎないとはいえ、です。