処方と診療スタイル

ベンゾジアゼピン系の安定剤って、医者にとっては「楽ができるくすり」です。

 

・症状が(その時は)なくなる

・よって患者さんは満足する

・よって医者はいいことをした気がする

・そして患者さんは次回も来院する

・治らないからずっと通院する

 

…まあ、極論なのは承知していますけれども。

 

ちなみに、ベンゾジアゼピン系の安定剤そのものに、病気を治す力はありません。

骨折は痛み止めでは治りませんね?それと同じです。

ただ、骨折の痛みで夜も眠れなければ、骨折の治りも遅れるでしょうから、

そういう意味で、痛み止めは骨折の治りを多少は早くするかもしれませんね。

ベンゾジアゼピン系も同じです。

 

思うに、です。

精神科医は歴史的には、できるかぎりずっと通院していたほうが本人のためである病気、

つまり統合失調症躁うつ病を、主な治療対象としてきました。

そのころには、患者さんが通院したくなるくすり、というのは、

非常に価値が高かったと思います。

 

しかしいまは、そういう病気以外で精神科に通う人がたくさんいます。

また、とくに統合失調症に関しては、デイケアだったり作業所だったり、

以前よりは社会的サポートが得られやすくなっているので、

薬の「次回来させるはたらき」の重要性は下がっているのではないでしょうか。

 

もともとのうつ病なりパニック障害なりがすっかり治っているにもかかわらず

ベンゾジアゼピン系のくすりがやめられなくて、

減らすために数ヶ月かけて通院しているひとたちもけっこういます。

減らしつつあるならまだしも、ずっと通院しているひともいっぱいいます。

なんとかならんかな、と思ってはいるのですが、

まあ、同僚の医者に怒られたり、いろいろむつかしいものです。