処理速度(PS)と作動記憶(WM)のかかわり。

処理速度(PS)について。重要な点は、これが「処理」速度=単純作業の速度に近い数値であるということです。頭の回転の速さを直接測っているわけではないんですよね。

 

 

処理速度(PS)だけがものすごく高く、他がそうでもない場合、頭の回転が速い、という印象ではないことがあります。単純作業は速いです。検品とか。手の動きもついていくなら、箱折りとかね。

処理速度(PS)が高い人にも、手の動きがついていく人とついていかない人がいます。

手の動きがついていく場合は、板書を写すのが速いので、学校の勉強についていきやすかったりします。

 

 

手の動きがついていかない場合であっても、この処理速度(PS)は、作動記憶(WM)を補う働きをします。作動記憶(WM)は頭の中の情報仮置場ですよ、といっても、置いておける時間はかぎられているので、処理速度(PS)が速いほうが多くの情報を扱えます。

そうはいっても、処理速度(PS)が低くても、ものごとをじっくり考える件についてはあまり支障はありません。たとえばTwitterなど、文章を書く場合には支障はなかったりします。

 

 

作動記憶(WM)がものすごく低くて処理速度(PS)がものすごく高い、という極端な場合、いっぺんに一つのものごとだけ考えて、その件は終了させて次、というのを超高速で繰り返す、ということになります。単純な内容を考えるのであればこれでいい。しかし、複雑な内容(たとえば比較など、いっぺんに複数の情報を扱う場合)を扱うのが困難で、しかし次から次へと素早く考えが進みそして周りが動く前に行動に移して、「考えが足りない!」とか怒られる、という人もいます。衝動性が高いと、事態は悪化します。

 

 

処理速度(PS)と作動記憶(WM)が両方高い場合、「あたまのいい」印象が強いです。ADHDなど脳内が多動? で処理速度(PS)も作動記憶(WM)も高い場合、高速で試行錯誤を行って奇抜かつ有効なアイディアを考え出すという天才みたいな人もいます。高性能なコンピュータですね。メモリも十分、速度も速い。将棋も最近は、コンピュータのほうが強かったりするのでした。あれも試行錯誤。

ただ、素敵なコンピュータも、アプリの品質が高くないとあんまり役にはたちません。アプリの品質には、言語理解(VC)と知覚統合(PO)がかかわってきます。そうはいっても、アプリの品質向上には処理速度(PS)と作動記憶(WM)が高いほうが便利、などなど、このへんも個々人の状況に合わせた分析が必要です。

 

 

処理速度(PS)だけが極端に低い場合、制限時間内に終わらず怒られることが増えます。また、教えてもらう時間・習得にかけられる時間は多くの場合有限なので、時間内に習得できず怒られることがさらに増えます。このため、怒られすぎて萎縮してしまい焦ってうまく行かないケースがあるように思います。

他の能力が高い場合、(ここまで習得しているということは)これからの習得についても速いはずだ、と期待されてしまい、よけいに「真面目にやれ」とか怒られてしんどい思いをするケースもありそうです。時間さえかけさせてもらえれれば習得できるのに、ということもあるのではないかと。

「ひとつだけ」低いのって、他からの類推で期待が高くなってしんどい思いをしがちな気がします。

 

 

処理速度(PS)が低い場合、板書を写す前に消されるなど、焦らざるを得ない経験が積み重なっていることがあります。ほぼ例外なく、「時間を測る検査で焦ってしまい、実力が出せない」印象です。その検査の能力に比して速度が遅いから点数が低い、というだけではなく、焦ってしまってミスが増えている。このへんは、実生活の状況をたずねつつ、性格も勘案しつつ、分析することになります。

また、ADHDの人など不注意で困った経験の多い人は、ケアレスミスを防ぐために慎重になり、処理速度(PS)の検査でほんらいの速度より遅い、ということになってしまったりします。

 

このへんが、点数だけ気にするのはやめてほしいという理由です。点数が、いろいろな事情で変わってしまうからです。

 

 

知能検査は、かなり複雑です。これまで書いてきたことも、本来は一つ一つのテストをを含むいろいろな情報(数値だけでも、組み合わせはほぼ無限)を含めて解釈すべきことであり、本人の事情とか困難とかと照らし合わせた上で最終レポートを作成する必要があります。なので鵜呑みにしないでくださいね。