「ワーキングメモリ」の働き、について。

ワーキングメモリ、あるいは、作動能力、についてです。「頭の中の、作業を行うテーブルみたいなもんです」 いやまあそうなんですけどね。

脳が、どれだけのことを同時に行えるか、というほうが、わかりやすいように思います。マルチタスク、といったほうがわかりやすいかな、でも、これ、2つの仕事を同時に進行するってことだけではないので、「マルチタスク」では誤解を招くかもしれません。でも、便利なので、以下、「マルチタスク」で話しますね。

 

 

たとえば電話。受話器/スマホを持っているだけで、話す・聴く・受話器/スマホを持つ、のマルチタスクになります。イヤホンを使うとかなり楽です。

 

 

話すときもそうです。自分が「話す」と「考える」がマルチタスクになってしまうので、考え「ながら」しゃべるのが苦手な人がいます。事前にメモを作るほうが安全です。

これね、言語能力が高い場合、問題が深刻になりやすいです。だって、たくさんしゃべる+考えながらしゃべるのが苦手 → たくさんしゃべって、相手が混乱する。さらにスピードまで速いと、相手はもっと混乱します。相手のスピードが速くてマルチタスク能力(ワーキングメモリ)も高ければ、「聴く」と「考える」を同時に進行させて、整理してくれるかもしれません。

 

 

聴く場合は、事前情報があるとずっと楽です。

大学などの講義であっても、7−8割わかっていて聴くほうが、頭に入るっていいますよね。すべてが新情報だと、ついていける人は少ないです。

 

精神科でも問診票があります。これで、事前情報を収集しておくと、事前情報以外の部分に注目して聴くことができます。「姉が電話してきました」についても、「姉がいる」という事実に注目しなくて済むほうが楽です。

 

「聞いている間はわかった気がしたんだけど、さて、どういう話だったっけ」…… こういう場合、記憶力の問題ではなく、ワーキングメモリの問題であることがときどきあります。

 

 

考えることについても、マルチタスクは関わっています。「比較検討」ってことばがあるじゃないですか。比較って、同時に考えないとできないんですよね。

メリットはこうで、デメリットはこうで…… メリットだけ考えることはできる、デメリットだけ考えることができる、その後、どっちかを忘れたわけじゃない(記憶には問題がない)にもかかわらず、片方についてしか話題にしない。いっぺんに扱えないわけです。

こういう場合、紙に書いて考えたほうが安全です。

 

 

かくいうわたしも、ワーキングメモリがさほど高い方ではないので、診察においても、話の速い人についていくのはたいへんです。聴く・まとめる・話す・書く・診断する、などのマルチタスクです。ときどき死にそうになってます。知能検査などから考えるに、ワーキングメモリを総動員するとけっこう疲れるんですよね。