うつとうつ病と適応障害について。
「うつ」って、よくいいますよね。
「ゆううつ」の「うつ」です。気分が落ち込んだまま明るくなれない、やる気が出ない、動きたくない、というか動けない、という感じの状態を指します。
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状態、といいました。
たとえば、「腹痛」は、病名ではありません。そのいっぽうで、「胃腸炎」は病名です。同じように、「うつ」は、病名ではありません。
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「うつ」については、2つの病名がありえます。
うつ病は身体・体質の問題
適応障害は、本人と、本人をとりまく事情の、相性の問題
と考えてもらえればいいかなと思います。
とはいっても、
うつ病で、いろいろな事情に対処する気力がなくなって、適応障害みたいになるとか、適応障害で気力体力を使い果たしたのがきっかけでうつ病になるとか、「両方」ってことも、たまにはあります。
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昔から、昇進をきっかけにうつ病になる人がいます。
自分に向いた仕事でがんばって、昇進も以前から希望していて、じっさい認められて昇進して、まわりも喜んでくれている。でも、本人は調子をくずしている。
こういうのは、うつ病のことが多いです。
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適応ってなんですか、と、聞かれることがあります。
現在の状況になじんでいるかどうか、ってことです。
これ、2つの要素があります。
・状況との相性
・本人の能力とか努力とか
相性のほうがメイン、というのが印象です。わたしも、事務の仕事を任されたら、ぜったいに適応障害になると思います。事務職に必要なあらゆる能力が足らないからです。電話も苦手ですし、字もあんまりきれいじゃないですし、エクセルは使えるけど嫌いですし、ファイルの整理整頓とかいつまでたっても終わりませんし、コピーはよく曲がってますし、そもそも、きちょうめんさが足りません。
とはいっても、たとえば、事務の中でもわたしにできそうな仕事があって他に得意な人がいなくて、自分の得意分野で活躍することができれば、適応障害にはならないかもしれません。この場合、得意分野について精進するだけでなく、をアピールする「努力」が必要そうですよね。
努力して、エクセルのエキスパートになることも、できるかもしれません。エクセルが向いていれば、ですけれど(自信ない)。
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もちろん、人間関係が原因のこともよくあります。パワハラ上司とか、適応障害の原因ナンバーワンです。
とはいってもこれも難しい問題で、そもそも向いていない仕事の場合、努力してもなかなか向上しないから上司もイライラするし本人も落ち込むしで、そもそもあんまり気が合わない組み合わせの関係がさらに悪くなっている、という可能性も、ないとは言い切りづらいです。
まあ、上司がパワハラ気質であろうとなかろうと、適応障害は適応障害、ということが多いです。
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合わない仕事だからつらい、とか、ふつうですよね。健康な人でも、つらいものはつらいです。
専門的にはいろいろありますけれども、休んだほうがいいかどうかについてのかんたんな目安は、「気分転換できるかどうか」だと思います。ふだん気晴らしになっていることで、気が晴れるかどうか。休みの日の気分はどうか。
「もうちょっとがんばりたい」「もうちょっとがんばれる」と思えるかどうかも大事です。「もうちょっとがんばらねば」ではないですよ。「もうちょっとがんばれるはずだ」とも違います。「もうちょっとがんばれる、と思いたい」とも区別する必要があります。ここ、難しいんですけど、わりと重要。よくよく聞くと、本人が、じつはきちんと判断できていることも多いです。
ちなみに、この判断が、事実と完全にずれている場合は、休んだほうがいい可能性が高いです。ここの区別がじつは、いちばん重要です。
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うつ病の要素も適応障害の要素もある場合、診断書には、「うつ病」と書くことのほうが多いです。適応障害っていうと、「そうかこの仕事向いてないってことね」と、いろいろ不利益がある、ってこともときどきありますから。
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精神科って、医学ではありますけれど、そんなに難しいことを考えているわけではなかったりします。薬もシンプルですよ。薬についてはまたいずれ。