精神科医って何をしてるんですか? へのお返事

先日中学生と話す機会がありまして、「精神科医とカウンセラーって何が違うのですか」と聞かれました。そういえば、それって、大人でも知らない人はいそうだなとふと思ったので、説明してみます。

 

まず、時間の使い方が違います。

カウンセラーは、多くの時間を患者さんとの面接と記録を書くことに使います。

精神科医(病院勤務)の場合、外来患者さんの診察と、入院患者さんの診察、これに加えて書類(年金とかね)を書くことが仕事になります。また、診察には、薬を決めて処方することが含まれます。

 

次に、主な対象が違います。

カウンセラーがあつかう「べき」なのは薬では治らない人や薬で治すべきではない人です。たとえば、「進路に悩んで悩みすぎて頭が痛い」のであれば、これは薬をのむべきではなく、カウンセラーに相談すべきですよね。先生でもいいけど。また、PTSDもカウンセラーの領域だと思います。ただしこれはカウンセラーの技術の中でも特殊で、上手に扱えるのは少数(専門にしている人もいる)かなあ。

精神科医の場合、ぜったいに見逃せないのは、「薬で治るし、薬で治さないかぎり治らない人」たちです。代表は統合失調症躁うつ病うつ病ですね。統合失調症の人がカウンセラー「だけ」にかかっていたら、治るのはすごく遅れると思います。

 

ということは、精神科医の仕事には、「診断」が入ってきます。できれば、精神科で「薬が必要かどうか」を見極めて、次に「薬+いわゆる精神療法」でいいのか、「薬+カウンセリング」が適切なのかを区別する、がいちばんですね。そのうえでカウンセラーに依頼するのがいいかなと。そう、診断して「依頼(指示)」という流れが入ってきますね。

 

受け持つ患者さん/クライエントの数も違います。

カウンセラーは少なく、精神科医は多いです。

ということは、一人にかけられる時間は、カウンセラーは多くて、精神科医は少ないです。カウンセラーは30分とかの面接、精神科医は「5分診療」だったりしますね。15分はかけたいけど。わたしとしては。

 

できることも違います。

精神科医ができることのなかには、薬の処方だけでなく、「生活を支える」的なものもあります。

つまり、

・福祉制度の活用(年金とか自立支援とか障害福祉サービスとかの書類)

・看護師さんなど他職種への「指示」(入院中に、看護師さんにいろいろお願いするとか、ソーシャルワーカーに退院後の生活支援を頼むとか)

などが含まれるわけです。職場や学校への連絡は、医者もカウンセラーもできますけれど、「医者の言うことであれば聞く」という職場がときどきあるのは事実です。さらには、カウンセラーへの「指示」も仕事になることがあります(保険適用の場合)