知能検査で計れるものその3。作動記憶。

「作動記憶」、ワーキングメモリともいいます。これ、要するに「テーブル」です。テーブルとはなんぞや。これから説明します。

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テーブルが広いほうが、ものはたくさん乗ります。あたりまえですね。この、「頭の中のテーブル」が、作動記憶です。

 

作動記憶を計る検査は3つあります。

・数唱(言われた数字を繰り返す/逆に言う)

・語音整列(数字と文字の並びかえ、口頭)

・算数(口頭で言われた、文章形式の計算問題を解く)

 

これ、全部、とにかく問題文を覚えなければ話になりませんよね。まずは、「どれだけ覚えられるか」=テーブルの広さを計ります。おもに数唱ですね。電話番号など、聞けば覚えられる人とメモを取りつつじゃないと覚えられない人(わたしは後者)っているでしょう。あれです。

 

さて、テーブルに乗りさえすればいいってものじゃなくて、テーブルの上のものをいろいろ「操作」することができるとより「優秀」な感じがしてきます。上に書いた3つの検査は、上から順に、複雑な操作ができるかどうかのテストになります。たとえば、数字を繰り返すだけなら、記憶さえできればいいですよね。しかし、逆から言おうとする場合、記憶した数字の並べ替えが必要です。

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たとえばこんな感じです。覚えるのが得意でも、並び替えなどの操作が苦手な人はときどきいます。また、操作が複雑になるとギブアップ(算数とかね)の人もいますし、テーブルも広くて操作も得意、という人もいます。

たまに順唱(5−1−4→5−1−4)より逆唱(5−1−4→4−1−5)の点数のほうがよい人がいます。これは、順唱のときに緊張していて実力が発揮できなかったり、「今度は数字を覚える検査だ!」という新しい状況に慣れるのに時間がかかる人で起こりやすいです。とくに後者の場合、説明や練習が懇切丁寧な、「語音整列」の得点が上がることが予想されます。

 

さらに、この「作動記憶」の結果は、集中力や緊張でかなり変わってきます。(言語理解や知覚統合はそうでもないです)なので、リラックスすると得点はよくなります。そりゃそうですよね。思いっきり緊張していたら覚えられるものも覚えられません。

 

こういう、「ひとまず覚えておく能力」「頭の中だけで色々考える能力」が作動記憶です。これ、日常生活でかなり重要で、たとえば「あれやっといてこれやっといて」がとりあえず覚えていられるかどうかに直結します。

いっぽうで、この作動記憶が高い場合、たいていの図形問題などは、紙の上で補助線を引くよりも頭の中でやってしまったほうが速いので、数学が(はたからみると)直感的に解ける天才型の人もしばしば見かけます。

 

指示を覚えていられるかとか、頭の中で操作できるかどうかとか、とくにスピードを要する検査(たとえば積木とか、時間制限のあるもの)には作動記憶のよしあしが関わってくることが多いので、そのへんを加味して最終的な結果(レポートとか)を出すこともよくあります。