知能検査で計れるものその2。知覚統合。

WAIS-III つづき、です。今回はPO=知覚統合について。

vIQ 言語性IQ pIQ 動作性IQ fIQ 全検査IQ

VC言語理解 PO知覚統合 WM作動記憶 PS処理速度

 

 「知覚統合」が、単語としてはいちばんわかりづらいかもしれません。「視覚的情報を取り込み、各部分を相互に関連付けて全体として意味のあるものへとまとめあげる能力」とか書いてあります。これでもわかりづらいような気がします。すごくすごく雑にいうと、言語能力をさておいた、論理の力を見ているように思うんですよね。

 

以下、前回と同様、それぞれの検査項目を用いて分析?してみます。

 

知覚統合に含まれる検査は3つです。

・完成 → まちがいさがし(絵から「欠けている部分」を探す)

・積木 → パズル(見本を再現)

・行列 → パズル(次にくる図形は何でしょう)

完成と積木は制限時間あり、行列は制限時間なしです。

 

「完成」はまちがいさがしなので、もちろん、「細部を見逃さない」力、ということになります。また、「ここにあるはず!」という思い込みから離れることができてやっと見つかるまちがい、というものもあるので、どれだけ柔軟に注目部位を変えられるか、にも関わってきます。さらには、2つの図形を比べるわけではなくて「本来あるべき姿」と比べて何が足りないかを指摘する検査ですから、あるべき姿のイメージを持っているか、それと比べたときの違和感を持てるか/指摘できるか、それは常識的なポイントか(もっと重要なところを見落としていないか)という検査であるともいえます。

「積木」はパズルです。見本を再現するということは、空間認識であると同時に、(空間的)相互関係の検出でもあると考えます。これもたしかに、必要に応じてピースを組み替えねばなりませんから、柔軟性は求められる、とはいえ、「完成」よりは「それは違うだろう」がはっきりしているので、必要とされる柔軟性はあまり高くありません。また、時間制限があるため、処理速度である程度補えると考えられます。頭の中で回転させるほうが速いことがふつうなので、作動記憶でも補えそうです。とはいっても、ハイレベル?な問題になると制限時間が長くなってくるため、根気や好奇心も試されそうな気がします。

「行列」はパターン認識と推理です。「同じ要領で話が進むとしたら次は何か」ですね。パターンというより法則の認識と言ったほうがしっくりくるかもしれません。積木と似ているようにも思うんですけど、こっちは、空間的な相互関係というよりは時間的な相互関係に近いと思います。同じ要領で、ということは、提示された図形がどうつながっているかを分析せねばなりません。どうつながっているか、というのは、ことばでいえば接続詞です。接続詞といえば論理の基礎ですから、論理的に考える力に関わってきそうな気がします。

 

 

わたしの例を挙げますね。得意不得意の自覚にもとづいて述べてみます。わたしの結果は、完成12 積木18 行列16 でした。数字自体よりも、どれが高くてどれが低いかが重要であるように思えます。さて。

 

■ 完成が低い→一回思い込むと訂正しづらい、独自視点を持つことができるというか持ってしまう(常識的な見方ができないことがある)、謎に細部にこだわる、見落としが多い

■ 積木が高い→(処理速度・作動記憶はたいして高くないことを考えると)パターン認識および法則の発見が得意、「筋が通る」「納得できる」まであれこれ考えるのが趣味、因果関係よりは相関関係を見いだすのが得意、(類似の高さも含めて)分類が得意

■ 行列がそれなり→論理的な考えはそれなり、(言語理解で補っているため)接続詞でわかりやすくつないだ文章を書くのが得意、論理の破綻は少ない、そこまで複雑な話でなければ予想はできる

 

言語能力(これって、後天的な学習がかなり関わってきますよね)を差し引いた、いわゆる頭の回転の得手不得手あるいは論理力に関わってくるのが「知覚統合」のように思います。また、これらはすべて絵・図形が相手、ということは、視覚的な情報処理でもありますね。

日常生活においてはこういう図形「だけ」を相手にすることは少ないです。ことばが関わってきたり、時間制限があったり、話が複雑だったりします。なので、他の検査もあわせて判断することが必要なわけですね。