他人の選択肢を奪ったり罪悪感でコントロールしたりしないためには?

自分自身をネタにした脅迫について、以前の記事で書きました。

選択の自由とか相手自身をネタにした脅迫とか、自分の意志が行方不明になってしまうトリックとか。 - 精神科医的ひとりごと(仮)

これね、脅迫される側に注目してましたよね。

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チーズケーキのほうが好きな花子ちゃんは、「チーズケーキを食べないと3日間寝込むかもしれない」と主張する太郎くんにチーズケーキを譲らざるをえなくなる、という話でした。アップルパイとチーズケーキの比較ではなく、アップルパイと(チーズケーキ+太郎くんが寝込むこと)の比較になってしまうから、チーズケーキは選べないわけです。

しかし、太郎くんは「俺がチーズケーキを食べる。花子はアップルパイを食べろ」などと直接命令しているわけではありません。なので、花子ちゃんはあたかも、自分が進んでアップルパイを選んでいるような気分になる、もやもやしつつもそう言われたらそうかなと納得してしまう、という話でした。

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さて。この状態を解決するにはどうすればいいか考えてみます。

選択の自由が奪われていることについての責任を、正しい場所に返すということ。 - 精神科医的ひとりごと(仮)

 

この話の要点は、チーズケーキを食べないと3日間寝込むのは太郎くんの問題である=太郎くんが解決するべき問題である、ということです。

 

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太郎くんは、病院に行くなど、自分で自分の問題を解決する必要があります。この件について、花子ちゃんが協力させられる筋合いはありません。それとこれとは関係ないということを、花子ちゃんがはっきり言うことができれば、対等な交渉ができますよね。

 

さて、お兄ちゃんに卑怯呼ばわりされて大いに反省した太郎くんは、今後どうすればフェアな交渉ができるでしょうか。チーズケーキを食べなければ寝込むというのはさすがにありえないとしても、もうちょっと現実的な問題はしばしば発生しますよね。

寝込む件を言わない、あるいは、少なくともこのタイミングでは言わない、というのがまず考えられます。これは、たいした問題でなければ有効ですよね。ただし、たとえばこの例で、ほんとうに寝込んだ場合、太郎くんもしんどいですし、ひょっとしたら花子ちゃんも罪悪感を感じるかもしれません。

寝込む件は言うとして、それをはっきり言った上で、チーズケーキをゆずってくれないか頼む、というのは一案だと思います。この話、「チーズケーキをよこせ」と太郎くんが言ったわけではないことが、問題を大きくしているんですよね。チーズケーキをよこせ、なら、いいよと言ってもいやだと言ってもいいわけです。花子ちゃんには選択の余地が生まれます。これなら、フェアな交渉に近づくのではないでしょうか。

 

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花子ちゃんも、太郎くんの事情をわかった上で「自分から」チーズケーキをゆずるのであれば、「わたしっていいやつじゃん」と、自己評価が上がったりするわけです。最初の例では、「太郎君を寝込ませるわたしって悪い子」という罪悪感を打ち消すために太郎くんにチーズケーキをゆずっていました。あとの例では、「病気の太郎くんにチーズケーキをゆずってあげるわたしっていいやつ」という自己評価の上昇が認められます。

罪悪感による他人のコントロールは、できれば避けたいですし、そのように誤解されるのも避けたいなあ、と、わたしは思うのです。

 

解決策はたぶん他にもあるんだけど、いまのところはこのへんで。

 

むぎちゃさん@_mugitea のコメントをヒントに書きました。ありがとうございました^_^