隠された脅迫に応じてしまいやすい人の特徴。論理が自分の役に立たないケース。

前回、太郎くんが「精神状態が悪い自分が、3日間くらい寝込むかもしれない」と主張することで、自分のほしいチーズケーキを花子ちゃんから奪ってしまうお話を書きました。 

選択の自由とか自分をネタにした脅迫とか、自分の意志が行方不明になってしまうトリックとか。 - 精神科医的ひとりごと(仮)

 

さて。花子ちゃんがどういう子であれば、このトリックに引っかかりやすいでしょう。花子ちゃんのせいという意味ではありません。たんなる傾向です。自己分析をかねて。

 

1)自分の気持ちについて気づきづらいと、ひっかかりやすくなります。

昨日アップルパイを選んだからといって、

「もともとアップルパイが好きだったのかもしれない」

「もともとアップルパイが食べたかったのかもしれない」

というのは事実に反していますね。でも、自分がアップルパイがが食べたかったんだということが最初からぼやけている場合、なにが食べたかったのか行方不明になってしまうことがしばしばある、と予測されます。わたし自身、その傾向があります。日本語そのものは得意であるはずなのに、何がほしいか、どう感じているか、ことばにするのが難しい。アスペ一般の傾向である、と、一部の教科書には書いてあります。

 

2)自尊心が低いと、ひっかかりやすくなります。

自尊心が低いというのは、自分なんてとるに足らない存在だ、ということですから、自分の希望なんてどうでもいい、ということにつながります。自尊心が低くなると、自分の希望と相手の希望が両立できないときに、つねに相手の希望を優先するのが当然である、と思い込んでしまうようなのです。

自分はチーズケーキが食べたい、太郎くんもチーズケーキが食べたい。このとき、太郎くんの希望を優先するのが、当たり前になってしまうわけですね。

これも経験があります。以前のケースでは、問題の相手は、わたしに、「わたしが、周囲にバカにされている・嫌われている・迷惑をかけている」と、繰り返し告げました。わたしはもともと、人間関係が苦手であると自覚していますから、その相手の言うことを徐々に信じるようになりました。その結果、自分がだめなやつだという感覚に陥り、そして、その相手のいいなりになってしまったのです。

 

3)聴覚過敏がかかわることもあります。

聴覚過敏があると、相手の声が少し大きくなっただけで、自動的におびえてしまい頭が真っ白になってしまうことがあります。頭が真っ白だと、「わたしはアップルパイが食べたかったんだ」とか、「わたしは、チーズケーキを選んで、すでに苦しんでいる太郎くんをさらに苦しめようとする悪いやつだ」とかいう非論理的な思考に飛びつきやすくなります。少なくとも、考え直しづらくなります。これも、わたし、心当たり、あります。

 

4)相手が機嫌を悪くする=自分が悪い、という、非合理的な信念があるかもしれません。

相手が怒る・機嫌を悪くする・自分を責める=自分が悪い/悪いことをした

相手が激しく怒る=自分はものすごく悪いことをした

このように信じている人がいます。わたしもそうでした。論理には強いはずなのに、です。他人のことであれば、これは非論理的であると指摘することができます。でも、自分については、仮に違和感を持つことができても、自分が悪いかもしれない、という疑いを捨てきれないのです。

これは、幼少時からの経験によるかもしれません。たとえばわたしの場合、場違いな行動を取ってしまうことが多く、しばしば怒られたり場の空気を凍りつかせたり他の人を不愉快にさせたりしていました。ほとんどの場合、なにがいけないかぜんぜんわかりませんでした。直後に説明されて理解できたこともあります。最近わかったこともたくさんあります。わたしの場合はアスペとも関係していそうです。アスペじゃなくても、ご両親などの教育方針によっては、この傾向は身についてしまうかもしれません。

 

まだあるかもしれませんけれど、ひとまずはこんな感じです。引っかかりやすい=ターゲットとして選定されやすい、です。太郎くんみたいな、(たとえそのつもりがなくても)アンフェアな取引を持ちかける人のなかには、引っかかりやすい人を直感で見つける能力が非常に高い人がいます。

上の1〜4は、決して、花子ちゃんが悪いという話ではありません。そうは言っても、花子ちゃんも、今後そういうターゲットにならないための対策は取れる気がします。次回はその対策についてお話します。わたしの課題でもあるのです。